2019年2月12日火曜日

抽象論にさようなら ワイワイ話せる会議をつくる質問

先日、環境再生保全機構さんが主催されている「若手プロジェクトリーダー研修」に招いて頂き、1日講師&アドバイザーを務めてきました。これは、地球環境基金から助成金を受けて活動しているNGO/NPOの若手スタッフが年に数回集まり、様々なテーマに関する研修を受講することで、実施中のプロジェクトをさらにブラッシュアップしていこうというものです。

今回は「合意形成」というテーマで、6名の方々が参加されていました。
限られた時間内で私から何をお伝えできるだろう・・・と考え、「研修翌日以降、団体内外の誰かと話しをする具体的な一場面で、今までとは違うやり取りになる」可能性がある質問を、研修生おひとり一つ持ち帰ってもらえたらいいな・・・という目標を立てていました。

研修の中で、各自が抱えている合意形成に関する悩みを共有し、アドバイスをするというセッションがありました。
その中で、ある研修生から、こんな悩みが共有されました。
「何度も会議やワークショップをおこなって団体の今後の方針について話し合うが、どうも具体的な話になっていかない。ある人は“会員の満足度を重視すべき”と言うし、ある人は“もっと多様なステークホルダーを巻き込んでいきたい”と言うし・・・なかなか議論が収れんしない」

ふむふむ。
これって、NPOに限らず様々な会議や打ち合わせの「あるある」かもしれませんね。
みなさんなら、この抽象論を、どうやって具体的な話し合い=地上戦に持って行きますか?

真面目な研修や会議も、時に笑いながら…

メタファシリテーションでは、課題解決に携わる当事者(たち)の経験を大切に、やり取りを進めていきます。
上記のような状況なら
「この会員さんは満足度が高いな・・・と感じた時のことで、ぱっと思い出せるのが何かありますか?」
「最近、会員さんに満足してもらえたな~と実感したことがありましたか?」
といった質問をしながら、“会員の満足度”という一言がどんなことを指しているのかということをお互いの実体験をもとに共有していくかな、と思います。
NGO/NPOの活動って、「志のあるメンバーが、同じ活動目的に向かってがんばっている・・・」はず、という思い込みがままありますが、実は言葉ひとつとっても、思い浮かべている具体的な内容がまったくすれ違っている、ということが起こり得ます。
シンプルな質問で互いの実体験を出し合い、「そういえば、あの時・・・」「こんなことがあったよ」と、ワイワイ話せる会議になれば・・・参加メンバーの経験を出し合う中で、それぞれの大事にしていることがキラリと光り、「あぁそこを重視してるんだね」と共通認識を持てるかもしれませんよ!



宮下和佳 ムラのミライ専務理事)




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2019年1月31日木曜日

あの時、別の聞き方をしていたら・・・?


ボランティアしてみようと思い立ち、ムラのミライの事務所で打ち合わせをしていたときのこと。
「お腹、空いたね」と、セネガルのバオバブ茶と屋久島の塩クッキーをご馳走になりました。
カメの形をした塩クッキーが入った箱には「屋久島の天日釜で炊き上げた天然塩を使用」の文字があり、それを見たとたん、突然10年以上前の記憶がよみがえってきました。

息子が小学生の頃、夏休みの自由研究で塩作りをしました。
沖縄に家族旅行に行く予定だったので、沖縄の海水と、近所の海(大阪湾)の水と、2つで塩を作って比べてみたら面白いなと思って息子に提案したのです。
沖縄の海の水をペットボトルに入れて持ち帰り、近所の海の水もすくってきて、それぞれお鍋で煮詰めて塩をつくりました。
すると沖縄の海水からは真っ白の塩、大阪の海水からはどす黒いグレーの塩が出来、あまりの色の差にびっくり!


息子は塩づくりの結果を模造紙にまとめました。私は、できた塩を学校に持って行って見せたら、みんなびっくりするよと言ったのですが、息子は嫌だと言って、私が何度勧めても持って行きません。
「ええー、なんで持っていかないの!?」と私。
「嫌だから」と息子。
「なんで嫌なん?」「嫌だから」
で話はおしまい。


















「あれはなんでだったんだろう?」
いまさらですが、22歳になった息子に聞いてみました。
「自由研究で塩作ったのに、学校に持っていくの嫌だって、持っていかなかったの覚えてる?」
「覚えてる」
「何が嫌やったん?」
「自己開示が嫌いな子だったから、そんな目立つことしなくていいって思った」

そっか、クラスで目立ちたくなかったのか。いや、塩で目立つって?

当時すでに親子のコミュニケーションはいまいちだったのに私は全く気づいておらず、思春期以降気持ちが大きくすれ違って、危機的状況がちょっと長く続きました。
もしあの頃メタファシリテーションを知ってたら、使えてたら、私の人生も彼の人生も、ほんのちょっと違っていたかもしれないな、なんて思いつつ、ムラのミライでのボランティア、始めます。

中川智子(ムラのミライ ボランティア)





               
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2018年12月26日水曜日

「自分の意図どおりに通訳してくれない」そんな時には

2016年の冬のある日のネパール。
この時期、エコレンジャー養成研修を修了した地域住民が、近隣の村でゴミ減量をテーマにした研修を実施し、それをムラのミライ/ソムニード・ネパールがサポートしていました。 そんな、エコレンジャーたちによる研修で起こった出来事です。

研修のようす

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エコレンジャーに研修には、研修のモニタリングや、必要な文房具の貸し出しのためにムラのミライとソムニード・ネパールのスタッフが同席させてもらっていました。
事前に「11時に研修開始だからね」と言われていたので、私はソムニード・ネパールのスタッフKさんと一緒に、11時に間に合うように研修場所へ行きました。

ですが、研修開始時間の11時になっても人が来ません。
本日の研修講師のエコレンジャーAさんが、事前にやり取りをしていた村の人に話を聞きに行って戻ってきました。

Aさん:参加者たち、もうすぐ来るって言っているから、もう少しだけ待ってもらえますか?
(※補足:研修開始予定時刻から15分が過ぎると、研修はキャンセルにしようというルールを事前に決めていました)

私:村の人たちには何時にここへ来てねって言ったの?
Aさん:10時半
私:10時半?えー、私は11時って聞いたはずだったけど。では、遅れたのは私たちでしたか・・・ごめんなさい。
Bさん:いやいや、研修の開始時間は11時なんですよ。だから大丈夫。(※補足:Bさんはもう一人の研修講師)
私:え??
Bさん:11時開始って言ったら、開始時間には来ないでしょう?だから村の人たちには10時半って言っておいたのよ。そうしたらボチボチ集まってきて、11時にいい具合に開始できるかな…と。
私:で、10時半には研修実施メンバーの誰かがここに来てたんですか?
Bさん:いや・・・私たちも11時に間に合うように来たから・・・

そんなやりとりをしている間に、参加者が集まってきたので、研修を開始してもらいました。

Bさんが言っていることはとてもよくわかるんです。
日本じゃ子どものころから5分前行動を叩き込まれるけれど、ビスターレの国ネパールでは15分や20分くらい遅れるのは日常茶飯事。
でも、村の人を自分に置き換えたらどうでしょうか?
10時半と聞かされていて、時間通りに行って、誰もいなかったら?
「今日は研修がキャンセルになったのかな?」と家に帰るに違いありません。主な参加者は家事や子育てを担う女性たち。時間があるなら、家でやりたいことはたくさんあるでしょう。 私なら帰ります。
それはエコレンジャーのオバチャン達も同じはずだし、何より約束した時間に来るっていうことは、研修に参加する人たちへの最低限の礼儀じゃないかと思ったのです。

私:まー、エコレンジャーのオバチャン達の言うこともわかるけど、やっぱり10時半って言ったらその時間に誰かはスタンバイしてないといけないよねぇ。時間通りに行って、誰もいなかったら、自分だったら帰っちゃうよね。

と後ろでこっそりKさんにこぼしつつ、研修の様子を見ていました。

さて、研修終了後。Kさんを連れ出して、後片付けがあらかた終わったエコレンジャーたちのところへ行きました。彼女たちはある程度、私の話す英語(+つたないネパール語)もわかるのですが、念のためにKさんに通訳をお願いしました。 

後片付け。※写真は別の日に別のエコレンジャーたちを撮影したものです。

私:みなさん、今日もおつかれさまでした!今日は、研修のここが面白かったですね!導入のやり方を前回と変えましたか? 
(その後、研修の中身に関するやり取りが少し続く)
私:ところで・・・今日は村の人たちには10時半って伝えていたそうですね。
うーん、気持ちはとてもよくわかる。10時半って言っても始まるのは11時・・・ってあるあるですよね。でもどうでしょう?もし、みなさんが村の人たちだとして、聞いていた時間に行っても誰も待っていなかったら・・・どうでしょうかね?

すると、Kさんが先ほどの私の言ったことは訳さず、「10時半って言ったんだったら、その時間に来なきゃだめじゃないか」と言い出したのです。
(※補足:ネパール語は流暢に話せなくても、ある程度聞き取ることはできる筆者)

エコレンジャーのオバチャン達に、ムラのミライやソムニード・ネパールのスタッフが言うからではなく、自分に置き換えてみて「そりゃそうだよなぁ」と思ってほしくて質問をしたのですが、どうも、Kさんは私が回りくどく言っていると思ったらしいのです。 (さっき「時間どおりに来なきゃねぇ」と話していたからでもあります。)

結局、オバチャン達は少ししゅんとした様子で「村の人と決めた時間には行かなきゃね。次はそうします」と言ってはくれました。
(その時の気まずさは察していただければ・・・)

私は何と続けていいか迷って、とりあえず「時間のことは、そうですね。次はそんな感じでよろしくお願いします。研修はどんどん面白くなっていっているので、また次も楽しみにしてますよ!」と言って別れました。 
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いろいろ「質問がまずいんじゃない?」「そこでそんなこと言う?」などツッコミどころはありましょうが、通訳をしてくれる人が、(おそらくは)良かれと思って、いろいろ自分なりの解釈をつけて話してしまう…という出来事でした。

そうしてしまったのは、私がこの時、シンプルな質問にできていなかったからなんですよね。
例えば、和田さんがどこかの村にいって、通訳を挟んで村の人たちにインタビューをしているとき。とってもテンポよく会話が進んでいきますし、通訳の人が自分の解釈を入れる余地がないんですよね。

和田さんと村人との会話については、過去にこんな記事を投稿しました。
ネパールの村で見た、和田さんの神業ファシリテーション

質問のシンプルさの違いが一目瞭然ですね。。。
そういうところでも事実質問の腕が試されているんだなということを痛感した出来事でした。

ここまでの失敗談はないかもしれませんが、通訳を挟むと、うまいこと事実質問でのやりとりができないんだよなぁ、と私と同じようなことをお悩みの方。
もっともっと、自分が思うよりシンプルに質問してみることを試してみられるとスムーズにやり取りができるかも!?

(田中十紀恵 ムラのミライ事務局長)

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2018年12月4日火曜日

子育てに使うメタファシリテーション講座@恵那 ビフォー&アフター

ブログを楽しみにしてくださっている皆さま、お久しぶりです。ムラのミライの原康子です。なんとも久しぶりのブログ投稿です。

ムラのミライでは2018年11月から講座をリニューアルし、「子育てに使うメタファシリテーション」講座も1回2時間の講座を、2回に分けて受講していただくことで、2ステップでじっくり学べるようになりました。

今回ブログでご紹介する岐阜県恵那市での講座は、リニューアル後初の「子育てに使うメタファシリテーション」講座でした。

2018年10月と11月、秋の観光シーズンがピークを迎え、世界各国、日本各地から訪れる人と観光バスでごった返す京都をしばし離れ、岐阜県恵那市に行ってきました。10月も11月も私が訪れるときはいつも快晴の恵那でした。

深呼吸とネパール・インド料理店のランチ割引券

恵那の駅に降りて最初にしたのは深呼吸。交通量の多い京都市内の空はいつもどこか灰色がかった水色、空気もいつも排気ガスの臭いがします。恵那の空は青く、高く、冷たく、かすかに木の香りを感じる空気は、深呼吸をする度に肺が喜んでいるような気がしてきます。

深呼吸しながら、ふと隣をみると、おばちゃん2人がネパール語で話していました。久しぶりにネパール語で話してみよう〜と(2016年までネパールにいました)、ネパール語の単語を駆使して、2人のネパール人のおばちゃんに話しかけました。

すると「知り合いに電話したいのに、SIMカードの残高がなくなってしまい、困っている。あなたの電話を貸して欲しい」という感じのことが分かりました。早速「この携帯を使ってください」と携帯電話を渡しました。しばらくすると恵那市内でインド・ネパール料理店をやっている、というネパール人の青年がおばちゃんたちを迎えに来ました。

別れ際、「私は以前、ネパールのカトマンズで、ネパールの人にとってもお世話になった。日本で困っているネパールの人がいたら助けるのは当然のことです」とネパール語で伝えたところ、ネパール人の青年は流暢な日本語でこう答えてくれました。

「そうですか、ネパール料理が好きですか。ネパール料理はおいしいです。お店にカレーを食べに来てください。はい、これは割引券です」

青年にもらったランチ割引券を片手に、しばらく「私のネパール語もまだまだ捨てたものではない」と感慨にふけっていると、私を恵那駅まで迎えに来てくださった方と会えました。

講座を受けるまえVS講座を受けたあと

恵那での講座は「子育て寺子屋ミチクサ塾」(以下略、ミチクサ塾)という団体のメンバー研修がメインでしたが、メンバー研修の合間に一般の参加者約20名を対象にした2時間講座も実施しました。このなかで、10月と11月のリピーターは6人。

連続2回講座の強みは、事実質問を実践した成果を参加者の皆さんから直接聞いて、「こういう場合はどうする?」という具体的な事実質問への置き換え練習が出来ることです。

2回目となった11月の講座は「10月の講座のあと、事実質問を実践した方からの報告」からスタートしました。以下は参加者の皆さんの声です。

・講座を受ける前の自分がどれだけ子どもの話を聴いてなかったか実感した。がんばって2,3の事実質問はやってみたが、事実質問だけで続けてゆくのは難しかった。でも、この1カ月間、子どもへの「なんで○○してないの?」は封印できたと思う。

・4才の息子は無口で「この子は自分のことを話したがらない性格なのかな」と思っていた。10月の講座で「エントリーポイント」のことを聞き、「息子が関心を持っていそうなことは何か?」を意識するようになった。ある日、絵本のタイトルを息子がつぶやいたので、がんばって事実質問に挑戦してみた。「(本には)誰がでてきたの?」「その子はどこへ行ったの?」「その後、何をしたの?」「その絵本を読んでくれたのはどの先生?」「どこで読んでくれた?」とゆっくり質問してゆくと、普段はほとんど話さない息子が、細かく本の内容や、本を読んだときの保育園の様子をどんどん話してくれた。あまり私に甘えてくることもない子だったけど、絵本の話をした後は、ずっと私の膝の上にのってきたり、手をつないだりして、とても嬉しかった。

・夫に「なんで早く○○の準備しないの?」と言うのをグッと我慢したつもりだった。でも「なぜ?」を我慢しただけで、実際は夫の自己肯定感を下げ、「はやく、はやく」と追い詰めるよう投げかけをしているのに気づいた。夫の自己肯定感を上げながら、「私は」を主語にして対話をする方法を他の参加者と考える時間があったのがよかった。まだまだ事実質問の引き出しが少ないので、今後も仲間と練習を続けたい。

・小学校の遠足の後に、娘が「帰りのバスで酔った」と言うので、細かく事実質問で聞いていったら、行きも、帰りもバスに酔っていたことが分かった。子ども自身も思い込みで話していることが分かり、「これが事実を聞くことでお互いの認識を一致させる、ということか!」と実感した。私からの「バスで酔ったこと」についての事実質問に答えた後、娘は私に聞かれる前に、どんどん細かく遠足であったことを楽しそうに話してくれて、しばらく話が盛り上がった。講座を受ける前の私だったら「バスで酔った」と聞いたら速効で、「なんでもっと早く酔い止めの薬を飲んでおかなかったの?!」と言うところだったが、「なぜ」を我慢して、娘を責めることなく、事実を聞けてよかった。


実践的な「実践ノート」を使ってみました

最初の講座(恵那の場合は10月)では、「事実質問とは何か?」「事実を聞けない質問を我慢すること」がテーマでした。恵那の参加者の皆さんの多くが、それらを実践されていたことが分かり、とても嬉しかったです。

2回目の講座では(11月)、「事実を聞けない質問」を「事実を聞く質問」に置き換えてみることがテーマでしたが、新しく「実践ノート」を使って、事実質問を使えた事例、使えなかった事例を検討しました。

恵那の講座参加者の皆さんと「実践ノート」を使ってみましたが、これが「実践ノート」という名前のとおり、とっても実践的でした。

これまで講座で使っていた事例のほとんどは、ムラのミライの講師が事前に準備したものです。しかし「実践ノート」で扱うのは、参加者の皆さん1人1人の実際のケース。「1度あることは2度ある、2度あることは3度ある」とはよく聞きますが、人にはそれぞれ対話のクセがあります。実践ノートに書かれた対話は、繰り返し起こる可能性が高いのです(それが事実質問を使わず、相手の自己肯定感を下げてしまうようなケースなら特に!)。なので、実践ノートを使って、「事実を聞けない質問」を「事実を聞く質問」に置き換えてゆくと、次にそのような場面になったときに、その人がすぐに使える、という点で、実践的なのです。

例えば「実践ノート」の項目のなかには、「事実を聞けない質問を我慢したケースを挙げてください」という項目があります。参加者の皆さんの思い出せる範囲で、「なんで○○したの?」「○○はどうだった?」という問いかけをグッと我慢したシーンを書き出してもらいます。書いたものを発表するうちに、“確かに「なんで○○したの?」とは言っていないけれど、「○○したらよかったのに〜」と相手の自己肯定感を下げるような言い方を繰り返ししており、自分の口癖がわかった”というケースもありました。

恵那での2回連続講座にご参加いたたいた皆さんから、11月以降のお話もぜひお聞きしたいです。どなたか、ブログに書いてもらえないかお願いしてみることにします。


実は、恵那の講座のことをブログでご紹介したかった本当の理由は、
・リニューアルした講座の宣伝をしたかった
・半年ほど、ムラのミライのMWさんに“ブログブログブログ”と催促されたていた
と思う方が多いかもしれませんが(それもアタリです)、大きな理由の1つはその「写真」です。


ミチクサ塾の太田礼子さんが撮ってくださった写真は、どれもあたたかく、ほんわかした空気が伝わってくるようで、私は太田さんの写真の大ファンなのです。太田さんの許可をいただいたので、これからたびたびムラのミライの広報にも登場するかもしれません。写真提供にご提供いただいた太田さんをはじめ、ミチクサ塾の皆さん、ありがとうございました。また恵那で皆さんに再会できるのを楽しみにしています。


原康子 ムラのミライ 研修事業コーディネーター)



*この記事でお伝えした2回連続講座は、「子育て寺子屋ミチクサ塾」の方が、京都から恵那までの交通費や講師謝金2回分を、いくつかの助成金に申請してくださって実現しました。「子育てに使うメタファシリテーション」講座は、各団体に合わせた研修企画(助成金申請も含めて)をご一緒に作ることもやっています。詳しくはこちらの「お問合フォーム」で。




子育てに使うメタファシリテーション講座 各地での開催予定はこちら

http://muranomirai.org/kosodate201802

 


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2018年11月27日火曜日

気づきをもたらす「たとえ話」の秘訣 観察・交流・そして・・・

みなさん、こんにちは。
今回もセネガルからお伝えいたします。

まだまだメタファシリテーション初心者の私ですが、セネガルでは幸運なことに、その生みの親である和田さん中田さんを始め、メタファシリテーションを自在に操る方々のそばで見聞きすることができています。

今回もセネガルでの研修や村訪問でのメタファシリテーションの場面から、ヒントになる!と思った技をご紹介したいと思います。

1例目

2018年7月の和田さんによる「モデル農家養成研修」での一コマ。

研修では、農業経営に関わる作物栽培の収支計算をしていました。研修生の唐辛子畑を例に、栽培に係るコストと生産高を計算し、そこから利益を割り出していきます。

「18,000フランセーファー」

これが生産高から費用を引いた月ごとの利益でした。

ここで和田さんが一言。
「あなたたちはタバコを吸いますか?タバコだと何箱買えますかね?」

すると研修生たちは、
「うーん、タバコか。1箱600Fから800Fするかな。そうだとすると・・・」
「お茶の葉だとどうかな。僕たち毎日飲むしね。一箱300Fだから、1か月だと10,000Fくらいかかっているな。」
 ・・・と、議論が盛り上がっているようでした。



2例目

同じく和田さんの研修。

土の中の水の動きを説明しているところでした。
「あなたたち、冷蔵庫は見ますよね?商店に置いてあって、スプライトとかファンタとか飲み物が入っていますよね。冷蔵庫を開けるとひんやり感じるのはどうしてだと思う?」

すると研修生たちはまた考え始めます。
そう、この問いかけによって和田さんは、研修生たちに考えさせ、空気や水は温度の高いほうから低い方へと動く性質があることを説明しようとしたのです。
 

3例目

今度は2018年5月に行われた、ムラのミライの前川香子による農家研修のモニタリングの場面でした。

「新しい井戸2つが欲しい。ムラのミライでは井戸作りの支援をしてくれないの?」
と、現場ではあるあるのお願いをしてきた研修生の一人に対して、香子さんが切り返しました。

「井戸が2つ必要というのは、どうやって計算したのですか?あなたの畑にどれだけの水が必要か分かりますか?」
研修生「はっきりとは分かりません。」

「結婚式でチェブジェン(魚の炊き込みご飯)を作るときには、ゲストに100人来るなら100人用。あるいは1000人来るなら1000人用って作るんですよね?」

香子さんはこの話によって、井戸の水も同じで、どのくらい必要なのか分からなければ、「ボール1杯分しかないチェブジェンを100人で分けるようなもの」、つまり「的外れな量」で計算してしまうということを説明したかったのです。


 

以上、3例をご紹介しましたが、ここでの共通点は「たとえ話」。
相手が分かりやすいように、いずれも相手の身近な例を使っています。そして、それが気づきを促すのに効果的なのです。

対話型ファシリテーションの手ほどき』(p.57)にもありますが、「普段から村人とやりとりをして」、あるいは普段から相手や相手が身を置く環境を観察し、それを身近な例として対話に取り入れることで、相手が気づきやすくなるとのことです。

上記の例では、和田さんは、村人が普段口にするタバコやお茶などを見て、あるいは商店に行ったときに冷蔵庫を見て説明に取り入れています。

香子さんは、実際にご本人が数日前に参加した、同僚の親戚の「結婚式」をヒントに分かりやすいストーリーを組み立てています。
これはやはり、普段から村人を観察したり、交流したりしないとできないだけでなく、相手に対する関心と、寛容と、何といっても愛がなければできない技だなと、私は後になってしみじみと思ったのでした。

相手に分かってほしい時には自分の説明に集中しがちです。
しかし、そこから少し冷静になって、私たちのいる全体の環境と話している相手に心を向けることによって、この「愛にあふれるたとえ話」は生まれるのだと思います。

たかが(例)、されど(例)。

この例一つが全体の対話を突破口に導くカギになるのかもしれません。
メタファシリテーションのそんな奥深さをまたまた実感した、お2人とのセネガルでの日々でした。


菊地綾乃 ムラのミライ 海外事業コーディネーター/セネガル事務所)




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2018年11月20日火曜日

住民主体の地域づくりを生むコミュニケーション、基本の基本

わが自治体も、地域づくり、地域おこしに取り組もう!
市民との協働で・・・地域資源を活かして・・・と、がんばって開いた住民参加型ワークショップ。
いろいろなアイデアが出た挙句「あとは事務局に」と言われて、逆に役所の仕事が増えてるんですけど・・・なんてことも、あるとかないとか。

「この行政依存、何とかしたいよね」
・・・でも、いったい依存させているのは誰?どうすれば、その構造から抜け出せる?

コミュニケーションという観点から考えてみるために、以前にムラのミライがインドネシアで実施した研修での一コマをご紹介します。

2016年3月、インドネシアのロンボク島で研修が開かれました。
主催したのは、インドネシアのファシリテーター・ネットワーク。
以前にJICAプロジェクトを通じてメタファシリテーションを学び、インドネシア各地で実践しているマスターファシリテーター達が6年ぶりに大集合し、フォローアップを兼ねた指導者養成研修を自ら企画・実施したのでした。
講師はメタファシリテーションの生みの親=和田信明。研修参加者は、NGOや国際機関・行政など様々な組織で、あるいは独立コンサルタントとして、コミュニティ開発に携わるインドネシアのファシリテーターたちです。


初日、各自の近況をシェアした後、講師から参加者へのこんな質問から研修がスタートしました。
 

講師  村人が「定期的に貯蓄なんてできない。ビンボーだから」と言ってきた。何て答える?
参加者 「なぜですか?」
講師  ちがう!
参加者 「いちばんお金のかかる生活必需品は何ですか?」
講師  ちがーう!
参加者 「今日は何を買いましたか?」
講師  うーん、悪くないけど・・・ちがう!
・・・
参加者 「ビンボーって、どういう意味?」
講師  その通り!これ、6年前に教えたぞー。覚えてるか?
参加者一同 (異口同音に)ハイ、覚えてます!
講師  ウソついてるだろ!
(一同爆笑)

以前のプロジェクトを通じて既に和田からイジめられ・・・いえ鍛えられてきた参加者たち。ぐりぐりとイジめられるのが楽しくて仕方がない様子(笑)


講師  じゃあ、続き。「ビンボーって、どういう意味?」って聞いたら、相手が「お金が足りないってことよ」と答えた。次に何て質問する?
参加者 「いくら足りないの?」
講師  そう。こう聞くと、答えられないことが多い。で、たとえばこう言ったりする。「精米機が必要なんだけど、お金がなくて買えないのよ」。そしたら、何て聞く?
参加者 「収穫期はいつ?」
講師  ちがう。
参加者 「どこで精米するの?」
講師  ちがう。
参加者 「(その精米機は)いくらするの?」
講師  そう。知らなければ、それは単なる願望。知っていたなら次に「○○ルピア足りないって、どうやって(いつ)わかったの?」と、さらに聞いていくことができる。

講師  この場面で、ファシリテーターの担うべき役割は何だ?
参加者 情報を橋渡しすること。
参加者 精米機が必要かどうかをふりかえらせること。
参加者 リアリティを見ること。
参加者 相手に考えさせること。
講師 その通り。質問を重ねていくことで、相手を考えさせる。相手が「そういえば・・・」と考え始めた時、物事のイニシアティブは相手のものとなる。考えさせることができず、こちらから答えを提供してしまったら、相手はずっとイニシアティブをこちらに求めてしまうことになる。依存関係ができてしまう。

その後も、次々と参加者に質問をつきつける和田。果敢に答えようとする参加者。

いみじくも、”ファシリテーターの役割は、相手に考えさせること”という原則通り、研修は展開していったのでした。



宮下和佳 ムラのミライ専務理事)

ティータイムに「次はどうやってあいつらイジめようかな…」とほくそ笑む講師


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2018年9月14日金曜日

村の成り立ちを洞察するためには・・・ 母袋で学んだこと2

岐阜県郡上市母袋集落で3日間に渡って開催された、地域づくり・地域支援のためのコミュニケーション研修
2日目の8月27日。私、インターン生の野片は3グループある内の1つに加えてもらい、グループの4人の参加者に混ざって研修に参加しました。
午後のグループワークの課題として与えられたのは、暮らしを分解していくということ。
食、水、エネルギー、交通、住、ごみ、教育、環境、などといった暮らしの項目を細かく細かく分解していくということ。分解する中で、どのような選択肢があるのかを知ること。


私たちのグループは「住」の項目を選び、メンバーの中の一人のお宅について、分解をしていきました。
-お住まいはどちらにありますか?
-いつから住んでいますか?
-そのお家はどうやって探しましたか?
-お家を探す際の検索ワードは何ですか?
-一緒に暮らしている人はいますか?
-何階建てですか?
-部屋は何部屋ありますか?
-リフォームする際、使用した木材は何ですか?
-木材はどこで入手しましたか?

この様に質問を重ねていきました。聞きこんでいく中で、家主の家に対する理想やこだわり、お家の使い方が徐々に明らかになっていきます。質問をする傍らで、頭の中では自分の住んでいる家についても考えていました。

-いつから住んでいますか?
私が高校1年生の時からだから、今年で8年目かな。
―家は誰が設計しましたか?
知らないなぁ。
―そのお家は誰が購入しましたか?
私の両親。
―お家は何で出来ている?
木造のお家だけど、建材って誰が選んで、どこから持ってきたのだろう…

同じ質問でも、私から出る答えは「知らない」ばかり。どのような選択肢があったのか、その中の何を選択して、今暮らしている家が存在するのか。私には何も見えてきません。

住居は両親の財産です。では、自分で選んで購入した、たった今着用しているボーダーのTシャツを分解してみるとどうでしょう。
―いつ購入しましたか?
4年前です。アウトレットモールで購入しました。
―具体的に何というお店か覚えていますか?
忘れました。
―誰がデザインしたのでしょう?
分かりません。
―どこで製造されましたか?
タグには「Made in China」と書かれているけれど…広い中国の具体的にどこだろう。
そもそも、布地や糸も中国で作られているのかな。タグには綿100%とあるけれど、
どこで採取されたのだろう。誰が素材を選んだのだろう。
縫製したのは誰で、その際にどのような道具を使ったのかな。
中国から日本には、誰が、どうやって、いつ、運送したのだろう。
販売店への入荷を決めたのは誰で、価格はどうやって設定したのだろう。


なんてこった。
自分で選んだTシャツについてでさえも、一度事実質問を用いて分解を試みると、私は何も知らないのだということに気づきます。
分解しきれないことに気づきます。

私がこのTシャツを買った際の選択の基準は、精々ボーダーであるということと、学生にとってもお手頃な価格であったということくらい。
私の持ち物に対して事実質問を繰り返す中で、思い出した一節がありました。(以下、「途上国の人々との話し方」より抜粋)

「事実質問の練習 その2→身の回りの「もの」を取り上げ事実質問を30考える
…ここで重要なのは、ひとつの「もの」や「こと」には、多様な側面があることに気づくことである。…事実質問を行うことは、物事の持つ多様な側面についての知識と各要素間の相互関係への理解を深めるために絶好の訓練になる。その積み重ねが、ものごとへの理解を飛躍的に高めてくれること、請け合いである
途上国の人々との話し方、pp274-276)

今回の母袋の研修で学んだのは、私は自分の暮らしを構成する要素を分解しきれないということ。
知らないということ。
講師である和田さんは、ムラの景色を見るだけで、そのムラが辿ってきた過程が分かるとおっしゃいました。
それが、一人前のファシリテーターだと教えてくださいました。
一人前になれるよう、まずは自分自身の生活を分解しきれるようにならねばと思います。
私の暮らし、身の回りのものごとへ事実質問をもっともっと重ねて、訓練していきます。




(ムラのミライ インターン 野片真美)




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