2015年8月25日火曜日

「知らない」ということに気がつく

対話型ファシリテーションを初めて知ってからはや2年、事実質問の練習というと、「他人の相談に乗る」をしがちな私ですが、最近、モノについて質問をすることのおもしろさを噛み締めるできごとを体験しました。

それは、大阪府箕面市に住む私が、近所の商店街に行ったときのこと。個人経営の酒屋さんで買い物をしようとしてレジに行くと、そこで「粟生間谷産のハチミツ」という文字が目に飛び込みました。すぐ近くの地域の名前なのですが、こんな近所で養蜂をしているとは聞いたことがなかったので、思わず「これ、粟生間谷のどこで作ったものですか?」と尋ねました。
「あぁそれ、お寺に向かう道の近くに橋があるでしょ。あの近くなんですよ」
「へぇ~、箕面でもハチミツを作ってるところがあったんですね。初めて知りました」
こうやって話をしながら、レジのおばちゃんに、4月から7月の間に絞った、6種類のハチミツを味見させてもらいました。
「全部おいしいけど、どれも個性があって同じものはない、おもしろいですね~。」
という感想を述べると、
「これは△月だから、○○の花が満開に咲いてる時期でね。こっちは□□の花でね・・・。」
と教えてくれるおばちゃん。
楽しそうに話しをしてくれたので、その流れで、
「いつから作ってらっしゃるんですか?」
「蜂はどこから手にいれられたんですか?」
「何月から何月まで蜜が採れるんですか?」
と、細かく質問をしていくと、旦那さんや息子さんも店の奥から出てきて、我先にと答えてくれました。
そして、「蜜を絞る」工程についての質問にさしかかったとき、ハタと気が付きました。
「私、そもそも『ハチミツを絞る』ってどうやってやるのかまったく想像がつかない!」
完全防備をした人間がハチの沢山ついた巣を取り出す・・・という場面だけはテレビで目にすることはあっても、その前後に、いったいどんな過程があってハチミツができているか、知らないどころか考えてみたこともありませんでした。
そして、「知らない」ということに気がつくと、知りたくて仕方がなくなります。
「取り出した巣に群がっている大量の蜂はどうするの?」
「巣の中にある卵や幼虫は?」
「何人で、どんな道具を使って作業するの?」
「蜜を取った後の巣はどうするの?」
 そんな疑問をひとつずつ解消するために質問を重ねていくと、最終的に、1時間ほど喋り通して、気がつけば閉店時間を30分も過ぎていました。
最初は単に、「どこまで事実質問で会話をつなげられるか試してみよう」という気持ちで始めました。それが、「自分は、普段の生活で使っているモノやそれがどういう過程を経て存在するか、何も知らないんだ」ということに気づくきっかけになりました。

帰った後に『途上国の人々との話し方』を読み返し、こんな記述を見つけました。
「事実質問を行うことは、物事の多様な側面についての知識と各要素間の相関関係への理解を深めるための絶好の訓練になる。その積み重ねが、ものごとへの理解を飛躍的に高めてくれること、請け合いである。」
うーん、物事の多様な側面についての知識・・・、相関関係への理解・・・、それが「分かった!」とはまだ到底言えないけど、それまで当たり前に使っていた「ハチミツ」について、今まで見えていなかった景色が少し見えたという感覚はありました。

「他人の気づきを促す」なんて言う前に、まず自分が気がつかないといけないことが、まだまだ沢山ある!と喝を入れつつ、これからも「自分は知らない」という心持ちで事実質問を続けていこうと、気持ちを新たにしました。

みなさんも、身の回りにあるもので試してみてはいかがでしょうか?


(海外事業コーディネーター、コミュニケーション 近藤 美沙子

2015年8月11日火曜日

要はどういうこと?

前回の私の記事では、「ことばを噛み砕くこと」のエピソードについて書きましたが、今回は、「要はどういうこと?をおさえること」についてです。

舞台のA村は、2012年から流域管理の活動に参加し、これまで隣のP村の指導員たちから流域管理のコンセプトと計画、実践について習ってきました。そして、そのモニタリングのために、私もA村には何度も足を運びました。
6月末日、事業評価のために2名のJICAスタッフの方と、和田元代表が事業地に訪れました。これまでの活動を紹介するA村の村人たち、話のなかでは「ウォーターシェッド(流域)」という言葉が飛び交います。そこで、和田さんがこんな質問をしました。

「ウォーターシェッドとは何だい?」
すると、若い村人たちがA村の模型を指さしながらしきりに説明します。
「ここに雨が降って、水が山をつたって川に流れて、、、」
「三つのゾーンに分かれて、、、」
和田さんは、続けます。
「ウォーターシェッドってのは何だい?」
今度は別の村人がウォーターシェッドについて同じような説明します。それでも、まだ和田さんは、「ウォーターシェッドとは何だ?」と質問を繰り返します。
 また若い村人たちが説明をくりかえし、年配の村人たちは黙っています。すると、和田さんが1人の村人にたとえ話を始めました。
「山に農作業に行って、すごく喉が渇いているとき、そこに小川を見つけたらどうやって水を飲む?」※
オッチャンは両手を合わせて、水をすくうしぐさをしました。そのとき
「それがウォーターシェッドだ。」
和田さんがそう言った瞬間、村人は皆
「はー」
と、村人たちは、何かが頭の中にストンッ、と入ってきた表情を見せました。そのとき私も村人たちと同じ顔をしていたに違いありません。
この一連の対話の更にすごいところは、「ウォーターシェッドって、要はなんだ?」ということA村の人たちに理解させるのと同時に、モニタリングを行ってきた私自身が、「要はどういうこと?」を上手くおさえることが出来ていなかったことに気付かせる点です。このやりとりを見ながら、私は途上国の人々の話し方で登場するクマールさんのことを考えていました。
村の若者たちが話した「ウォーターシェッド」の定義が、全て間違っていたわけではありません。A村にも、良く理解して説明できる村人はいます。ただ、このコンセプトを10歳のこどもから80歳のお年寄りまでが共有して、村全体での継続的な活動につなげるには、辞書の定義やプロジェクトの言葉ではなく、本当の意味で「ウォーターシェッドとは何だ?」「それはあなたにとって何だ?」ということに、気付いてもらう必要があります。そして、そのためには、まず自分自身が「要はどういうこと?」を理解していることが大前提です。
 前回の「ことばを噛み砕くこと」に加えて、「要はどういうことか?をおさえること」この二つは常に意識して活動を続けていきます。


文字数の関係でやりとりを短くしています。

(海外事業コーディネーター 實方

このインドでのプロジェクト通信はこちらから

2015年8月4日火曜日

ファシリテーション手順 その1

前回の記事中田さんは、対話型ファシリテーションをマスターするには日頃の練習が大切だとおっしゃっていました。会話を途切らせることなく事実質問を繰り返し、相手の課題を解決するにはどういう方向に質問をもっていけばいいのか、ファシリテーションの具体的な手順を今回から数回に分けてもう一度復習したいと思います。

I:セルフエスティームが上がるようなエントリーポイント(話しのきっかけとなるもの)をみつける
 →身の周りのものを褒める

相手が身につけている物の中から意味のありそうなものを見つけ、「それは何ですか」「その帽子おしゃれですね。いつ購入したのですか」とセルフエスティームが上がりそうな簡単な質問をします。話しを始めた直後に課題に関する質問をすることは避け、相手との信頼関係を築きます。事実質問の種類としては、大きく2つに分かれます。①「いつ」「どこ」「誰」「何」の簡単な疑問詞での質問 ②「〜したことがありますか」と相手の経験を尋ねる、「〜がありますか?」と存在や物事の有無を聞く、「〜を知っていますか」と相手の知識を問う質問です。この2種類の質問を駆使出来るようになると、長時間会話をすることができます。必ずしも最初に選んだエントリーポイントから話しが展開できるとは限りません。その場合は何度もエントリーポイントに戻っては進むことを繰り返し、次の段階へ入っていきましょう。

II:課題を整理する

相手の課題が出てきたら「それが原因でどんな困ったことがあったか」を尋ね、相手の言う課題が本当に課題なのかを明確にします。会話の途中で「これは問題かどうか」と疑問が出てきたら、「その問題に対しどんな処置をしてきたのか」「それが原因で誰がどのように困っているのか」を質問します。もし、これらの問題に対して何も手を打っていなければ、それは問題解決への意思がないとし、またそれによって誰も具体的に困っていなければ、その課題は対処を要さないと判断しましょう。

いかがでしたか?今回は8つあるファシリテーション手順の中から2つ目まで紹介しました。それ以降の手順については、数週後にまた更新したいと思います。
詳しいファイシリテーション技法は書籍「途上国の人々との話し方」をご覧下さい。

引用
「途上国の人々との話し方」p293p297

インターン 池田)