2019年8月21日水曜日

セネガルからのお便り 〜プロジェクト&研修報告以外のお話編 その2

最先端の働き方〜アンテルモンドの事務所


原康子が2019年7月2日から8月28日までNGOスタディという研修制度で訪れているセネガルからお伝えしているシリーズ記事です。(その1はこちら

綾乃さんのお休みはいつ?

夜の9時を過ぎると会社中の電気が消えたり、休日にパソコンにアクセスしようとしても自動でログインできないという話を聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。

ムラのミライでは、以前から日本とセネガルとの時差9時間に関わらず、日本が昼間の時間に綾乃さんからメールが来るのを不思議に思っていました。セネガルなら、真夜中とか早朝とかの時間なのです。

「一体、いつ休んでいるのかしら?」

1人だけの駐在員で、セネガルの皆さんとの仕事、日本語での報告の仕事も、何もかもやらねばいけない状況ではあるものの、働き過ぎが以前から心配されていました。

今回の私に与えられたセネガルでの裏ミッションは、綾乃さんの働き過ぎを阻止することも含まれていました。

ムラのミライは、セネガルのカウンターパートNGO「アンテルモンド」の事務所を間借りしているのですが、綾乃さんの部屋ではいつもパチパチパチとパソコンをタイプする音が聞こえてきます。しかし、他の6部屋からは、話し声ばかりが聞こえてきます。

アンテルモンド事務所の入り口
2階が事務所になっていて、会議室を含めて6部屋あります。綾乃さんの部屋はメラニーさんという女性スタッフ(アンテルモンド副代表)と一緒です。

パソコンに集中する綾乃さんに、メラニーさんをはじめ、ママドゥさん(アンテルモンド代表)、その他のスタッフもしょっちゅう、声をかけてくるそうです。
 「あやの、5分に1回は他のスタッフと話さないとだめだよ。」
 「パソコンばっかりみてないで、散歩でもしておいで。」
 「あやの、ご飯できたよ。」
 「ちょっとランチに行くなら、僕の分もついでに運んできて」
 「今日は夜遅くに3階のゲストルームにお客さんが来るから、綾乃も一緒にいて、話しを待っていてよ」などなど。

綾乃さんは、かなり早い時間に事務所にやってきて、かなり遅くまで事務所で働いている唯一のスタッフ。ママドゥさん、メラニーさんからのあれこれ相談を受けて、頼りにされているだけでなく、会計担当スタッフ、警備員さん、運転手さん、料理担当のスタッフまでみんなが綾乃さんを頼りにしている様子でした。

これが実は彼女の仕事時間を長くしている一因でもありそうですが、それはともかく、アンテルモンドの最先端の働き方をご紹介します。

最先端のアンテルモンドの働き方


まず、何時から何時まで終業時間、お昼みは何時間という決まった勤務時間がありません。

代表のママドゥさんが、たった1人で暗くなるまで、残業しているような、新聞を読んでいるような感じで事務所に残っていても、他のスタッフはさっさと好きな時間に帰宅します。

午前10時頃に出勤し、お昼休みもなく夕方まで仕事をする人もいれば、午前11時頃に出勤してきて、半分仕事の話をして、あとの半分は政治と親戚の話をして、午後2時には帰宅してしまうスタッフもいます。毎日1人1人の働き方が、バラバラなのです。

私も、アンテルモンドの運転手さんに「今、ちょっとプールに入っているから、迎えに行くの30分後にしてね」と言われたり、メラニーさんに「今日は親戚のお祝いパーティがあるから、帰りにみんなで寄っていきしょう」と言われ、突然パーティに連れて行ってもらったりしました。

この自由な働き方、私には最先端に思えたのです。

インドとも、ネパールとも違う、アンテルモンドの働き方の自由さは突出していました。

特に3年間日本で暮らし、久しぶりに2カ月間という長い期間、セネガルに滞在しているから余計そう思えるのかもしれません。連日のように日本のニュースで耳にする長時間労働、過労、孤独などの言葉を忘れてしまうようなアンテルモンドの働き方です。

あるとき、日本からアンテルモンドを訪れた人が「何時に帰宅されるのですか?」と何気なくママドゥさんに聞いたら、「疲れたときに帰ります。」との返事。

また「昼ご飯は何時に食べるのですか?」と聞いたら、「お腹が空いたときに食べます」との答え。
こうした答えはまさに「その通り!」と思いました。

アンテルモンド事務所の会議室でママドゥさんとミーティング

綾乃さんのお休みをつくる

そんな自由な働き方のアンテルモンドの中でも、というかそんなアンテルモンドだからこそ、なかなか綾乃さんの仕事が減りません。

働き方最先端のような自由なアンテルモンドのスタッフのようにはいかなくても、何事も「やってみせる」ことが大事だと、率先して綾乃さんと一緒に息抜きをすることにしました。買い物に行ったり、海で泳いだり、おいしいものを食べたりなど、休む、休む、働く、休む、休む、働くというのを、徹底的に肩の力を抜いてやってみました。

ひと月近く経ったある日、綾乃さんがつぶやきました。

「あるとき久しぶりにセネガルの音楽を聴いたらですね、音楽があることを忘れて仕事してた自分に気づいてしまったことがあったのですよ。音楽っていいなあ〜としみじみ思ったのです。私、そんなに肩に力を入れて、仕事しなくてもいいんだな、と原さんの働き方をみて、音楽に気づいたときのことを思い出しました」

「おお〜肩の力を抜くというのをやってみせた甲斐があった!」と喜びつつ、20数年前、1人でインドに駐在していた頃の私の姿がまた重なりました。インドでの駐在をはじめて、最初の5〜6年間は綾乃さんのように仕事、仕事、仕事という時期がありました(今の綾乃さんの5分の1の仕事量やスピードだったかもしれませんが、私にしては猛烈な仕事量、高速スピードでした)。今の駐在2年目の綾乃さんの「頑張ってしまう」働き方は、身に覚えのあることなのです。

その当時の反省から、数年かけて、一生懸命、肩の力を入れないようにしてきましたので、50歳に近づいた現在では、かなり肩の力を抜くことが出来るようになりました。しかし、今度は一体どこに力をいれるかわからなかったり、力を入れたいときには肩こりがひどかったりと、脱力状態が続いています。

セネガルに来て、少し脱力状態から回復するかな、と期待したのですが、アンテルモンドの最先端の働き方を見せられ、「私などまだまだ〜」と実感。さらなる脱力状態を目指そうと思っているところです。


(ムラのミライ 研修事業チーフ 原康子

2019年8月15日木曜日

セネガルからのお便り 〜プロジェクト&研修報告以外のお話編 その1

はじめに:「報告書」ではない理由を800字以内で述べる


皆さん、こんにちは。

このお便りは私、原康子が7月2日から8月28日までNGOスタディ(注1)という研修制度 で訪れているセネガルからお伝えしています。
アフリカ大陸最西端の地が見えるところにも行きました
もう帰国してしまってから、皆さんにお便りしている可能性大なのですが、そこはセネガルと日本の1万4千キロという距離と、時差(注2)のせいということにしておいてください。

「NGOスタディって何?」
「セネガルで何の研修を受けているの?」
「研修とか言って、ホントは、夏休み(ヴァカンス)なんじゃないの?」
という疑問をお持ちの方もおられると思います。

帰国後、真っ黒に日焼けした私の姿をみた方は、その疑問が確信に変わるかもしれませんが、研修のお話は追々することにして、今回はセネガルでの研修やプロジェクト報告以外のお便りを中心にお伝えします。

それには理由が2つあります。

一つ目の理由は、日本も暑いでしょうし、セネガルも暑いので、ちょっといつもの報告以外の、のんびりとしたお話を夏休みスペシャルでお伝えしたかったという点。
スーパーの魚売り場の氷に突き刺さるセネガル国旗カラーのパプリカ


二つ目は、私の反省からくるものです。

インドやネパールにいた頃から、そしてどこの国に仕事に出かけても、「ワタシは○○プロジェクトの担当でこの国にいるのだから」と、プロジェクトのことばかり書いていましたし、プロジェクトのことで本まで出していました(注3)。

「○○プロジェクトでその国に行っているのに、それ以外のことをやっているのではないか?」と思われてはダメだとか、「仕事をしている(研修に参加している)アピールをしなければいけない」とか、自分でプロジェクト以外のことを書くこと、写真を撮ることなどに、勝手にブレーキをかけていました。もちろんそれは、税金や寄付金を使わせていただいているプロジェクトであれば、当然のことです。今回のセネガルでの研修もきちんと研修報告書を提出し、公開もする予定です 。(注4)

しかし、その国に行ってみなければわからない、見たこと聞いたこと、出会った人のことなどは、こうした報告書には全く書けません。

というのも報告書というは、事前に枚数や字数が決まっていて、さらに渡航する前から計画書が決まっていて、さらにその計画書にあること以外を書くのは歓迎されないことが多いのです。

長年、そんな報告書ばかり書いてきたものですから、プロジェクトや研修報告以外のことは書かないようにしようという体質になってしまったのだと思います。そんな反省から、今回はいさぎよくプロジェクトでもなく、研修でもない、セネガルで見聞きしたことをお伝えしようと思ったのです。

注1 外務省「NGOスタディ」というNGOスタッフへの研修制度があり、それに応募したところ「アンテルモンド」というセネガルの団体で、「循環型有機農業をテーマにした住民参加型の研修が組み立てられるようになる実地研修」を受講できることになりました。セネガル滞在中はダカールから車で2時間ほどのンブール県内の民宿に滞在しながら、アンテルモンドが所有する3ヘクタールの農場に通っています。

注2 セネガルと日本の時差は9時間。日本のお昼の12時は、セネガルの午前3時です。

注3 原康子著「南国港町おばちゃん信金〜支援って何?おまけ組共生コミュニティの創り方〜」新評論2014年

注4 NGOスタディの報告書は外務省のページで公開予定です。

1)やっと本題、セネガル便り:最初の3回は綾乃さんのこと

前置きが長すぎまして、読者の皆さんがお疲れになったような気がします。お待たせしました、やっと本題です。最初にご紹介するのは、菊地綾乃さんのお話です。

2017年5月からムラのミライのセネガル駐在員としてダカールで暮らしつつ、プロジェクト地のンブール県まで車やバスやタクシーや馬などを乗り継いで通っています。

秋田県の出身で、イギリスの大学院の修士号を持ち、ベナンやバングラデシュでの海外経験があり、福島の障害を持つ方の施設でのボランティア経験があり、フランス語、英語、ウォルフ語(セネガルで使われている現地語)、秋田弁を巧みに操り、関西弁リスニングを難なくこなします。

年間330日ほどセネガルに赴任しているので、京都に住んでいる私はこれまでなかなか綾乃さんと一緒になる機会がありませんでした。私はセネガルのプロジェクト担当でもないので、綾乃さんとメールでやりとりすることも少なく、年に1回の総会前後の会議で会うくらいでした。

こちらに来て、1日、2日と綾乃さんと一緒にいる時間が長くなりにつれ、「なんと、素敵なひと!」ということがわかり、まず3回にわたって綾乃さんのことをお伝えします。その1は、「通訳と綾乃さん」です。その2は「小銭入れと綾乃さん」、その3「バッグと綾乃さん」と続きます。

1−1)通訳と綾乃さん


言葉が出来ない私


セネガルでは、フランス語が公用語です。

しかし、私はフランス語がさっぱりできません。

「そんな地で研修なんて出来るの?」と呆れる方もおられるでしょうが、研修中は通訳してもらっているので安心です。問題は、それ以外のときです。

滞在中の民宿のスタッフにちょっとした相談があるとき「ガラスのコップを割ってしまったのでホウキとちりとりを貸してほしい」とか、アンテルモンドのスタッフに「A4サイズの紙がほしい」などの用事を頼むとき、お店で「おつりがどうも少ない?」と感じたときなど、そばに綾乃さんがいると、ウォルフ語に通訳してもらうことになります。通訳してもらいながら、ふと自分がインドに駐在していた頃を思い出しました。

蘇る20数年前の私


当時、ちょうど今の綾乃さんの年齢くらいだった私は、インドのムラのミライのプロジェクト地を訪れる日本人の方の通訳をすることがたびたびありました。よくテルグ語(インドで使っていた現地の言葉。日本でも公開されたテルグ映画「バーフバリ」で使われている言葉)や英語で通訳していました。綾乃さんの流暢なウォルフ語に比べれば、かなりいい加減な英語やテルグ語でしたが。

綾乃さんは会う度に、セネガルのカラフルな民族衣装を着ているのですが、そんな民族衣装を着て、通訳してくれる姿も、インドの民族衣装(サリーとかパンジャビドレスという上下)ばかりを着ていた当時の自分の姿に重なります。洗濯の繰り返しで、色の褪せた民族衣装のよれっとした感じ、現地の食べ物ばかりをモリモリと食べる姿も自分の姿と重なるのです。

ただ、つるつると小麦色に焼けた綾乃さんの姿と、カサカサと日焼けした現在の私の姿はさっぱり重ならないのですが、それはさておき。
アフリカの布を使った服を着る綾乃さん
上の写真に並べて「20年前のインドの民族衣装を着る筆者」の
写真を載せようとしましたが、デジタル写真でないのと
その他の理由で思いとどまりました


20数年前の自分の姿が綾乃さんに重なると同時に、私に通訳されていた日本から訪問者の方たちの姿は、現在の自分に重なります。

「ああ〜日々の小さなことが、なかなか相手に伝わらなくてもどかしい〜。」という一方で、「あれこれ面倒な交渉も、言葉が出来ないと、通訳さんに頼れて、楽ちんだなあ」とか。

今更どうにもなりませんが、綾乃さんに通訳してもらいながら、反省もします。

水のボトル一本という買い物も、お店まで一緒に付いてきてくれて、丁寧に通訳してくれる綾乃さん。彼女が私にしてくれるように、20数年前、日本からの訪問者の皆さんに通訳できていただろうかと。今後、セネガルで私が綾乃さんに通訳することはないでしょうから、日本や他の国に行って通訳をすることになったときは、綾乃さんを思い出そうと思うのでした。

携帯電話で日本語


綾乃さんはセネガル赴任してから習い始めたというウォルフ語が、とても流暢です。彼女の携帯電話は鳴りっぱなし。かかってくる電話の9割くらいは、ウォルフ語でやりとりをしています。

あるとき、珍しく日本語で電話をかけているのを見ました。「こんにちは、ムラのミライのきくちあやのです」と言いたかったようなのですが、舌を噛んでしまい「けくちあやのです」と言っていました。「ウォルフ語にない発音が、難しくなってるんだ」と、とても感心しました。「セネガルの人には、Kが続くKIKUCHIという発音が難しくて、なかなか名字は覚えてらえないんですよ〜」と話していたのを思い出したからです。

私が一緒のときは、なるべくウォルフ語と日本語の通訳をしてもらって、日本語を思い出してもらおうと思いました。「要するに、フランス語もウォルフ語を覚えるのが面倒なのでしょう?」という読者がいたら、それは考え過ぎというものです。
綾乃さんに村で通訳してもらう筆者

本屋でウォルフ語の辞書を見つけて、嬉しそうな綾乃さん


1−2)小銭入れと綾乃さん

ある日、ダカール市郊外にあるアンテルモンドの事務所に向かう途中、大渋滞に巻き込まれました。クーラーの効かない車の窓を全開にして、少しでも風が入ってこないかと外を見ていると、渋滞で数センチずつしか動かない車と車の間をぬうようにして、次から次へ物を売りの人たちがやってきました。売っているものは、バナナ、みかん、カシューナッツ、車のワイパー、ティッシュペーパー、水、大きめの扇子、USBケーブル、洗剤など様々です。どんな商品が売られているのかと、飽きずに見ていたのですが、言葉が出来るわけでないので、ただ見ているだけです。

インドにいた頃など、物売りの人と目が合おうものなら、ものすごい勢いで「買え、買え」と迫られ、買うまで車のあとを付いてこられることもしばしばだったので、なるべく物売りの人と目を合わせないように、最初は商品を見てないふりをして、見ていました。しかし、セネガルの物売りの人たちは、物静かに「買ってくれないかな?」という感じで近づいてきて、2回ほど「いまは要らないです」と手振りで伝えれば、すぐに次のお客さんを探しに行くので、とてもあっさりしていました。

綾乃さんは、物売りの人たちに話しかけられれば、「みかんは1キロいくら?」とか「このUSBメモリーはどこの国の製品?」「この扇子は素敵だけど、大きすぎて、バッグに入らないから要らない」など、ウォルフ語で話し始めます。渋滞を利用しておしゃべりを楽しんでいるかのようでした。

こうした物売りの人たちに混じって、子どもの物乞いがヨーグルトの空き容器を片手に、車の窓から小銭や食べ物を恵んでほしい、と綾乃さんに話しかけてきました。話しかけれてすぐ、小銭入れをカバンから取り出し、子どもに小銭を渡す綾乃さん。小銭をもらって去っていく子どもの背中に向かって「車があぶないから気を付けなさいね」と一声かけ、また小銭入れをバックに戻したのです。この一連の流れに全くのムダがなく、あまりに自然な動きで、私は心を打たれたのでした。最後の一声など、まるで知り合いの子どもに声をかけるような様子でした。


物乞いする少年の後ろ姿(注:ダカール市内の渋滞のときではありません)

その後、その小銭入れが素敵だったことを思い出し、後日、見せてもらいました。2011年の東日本大地震の後、福島の障害者の方の施設でボランティアをしていた際、その施設で作られた小銭入れを買ったのだそうです。

思えば、2019年6月、ムラのミライの2018年度活動報告会のときも、綾乃さんの、ぽつりとつぶやくひと言に感動したことがありました。報告会は綾乃さんのセネガル事業の報告から始まったのですが、小さなお子さんが椅子に座っているのに退屈し、会場内をよちよちと歩き始めたのでした。その時もサラリと「今日は、小さいお子さんにも参加してもらえて、心が癒されます」と一声添えてから活動報告を始めたのでした。そのあまりに自然なひと言に、他の参加者もほっとして、報告会が和やかな雰囲気で始まったのでした。

さて綾乃さんが小銭を少年に渡した自然な姿に感動して以降、自分も実践しているかというと、そういうわけではなく、小銭をあちらのカバンのポケットに入れてはなくし、こちらの服のポケットに入れてはなくし、という具合に、まず小銭がなくなる状態をなんとかせねばなりません。おそらく小銭入れを持ったら、その小銭入れをなくしそうです。ムダのない動きで、物乞いの少年に小銭を渡し、「気をつけなさいよ」と声をかけられるようにはなかなか時間がかかりそうです。しかし、物乞いの少年から「おばちゃん、ちゃんと同じところに小銭をしまっておかないとダメだよ」と注意される日は近そうです。
綾乃さんの小銭入れ

1−3)バッグと綾乃さん

ムラのミライのスタッフとしては1人でセネガルに駐在する綾乃さんは、やっぱり仕事が多くなってしまいます。もちろん綾乃さんだけがセネガルの事業をしているわけでなく、アンテルモンドのスタッフもファーマーズスクール(私が研修で通っているところです)のスタッフもとてもたくさんの仕事を同時にこなしています。

しかし、フランス語、ウォルフ語、日本語を扱い、パソコンもスマホも使いこなせる人は綾乃さん以外におらず、結果、1人で何役もこなすことになっています。

おそらくアンテルモンドの事務所中で一番忙しい人ではないかと思いますし、ムラのミライのスタッフの中でも抜群に仕事量の多い人です。一方、抜群に仕事量が少ない代わりに、抜群に口数が多い私。研修の合間をみつけては、何かと綾乃さんを手伝おうとするのですが、手より口が動いてしまい、綾乃さんの仕事を減らすどころか、逆に増やしてしまっている感が大です。

それはさておき、綾乃さんの仕事量の多さは持ち運ぶバッグの数からも伺えます。

最初の写真は、8月に一緒に村に行った時のことです。ファーマーズスクールのスタッフが綾乃さんと同じ村に行く、というので私も付いて行きました。その時の荷物の数が3つ。
荷物が3つのとき

これまでの20数年間、私も様々な国で、何人もの人たちと村を訪れましたが、畑の中で村人の話を聞くという日に、3つの荷物を抱えて行く人は綾乃さんが初めてでした。

「何が入っているの?」を聞くと、「もしものときに、この書類も、あの書類も必要なるかもしれないから」と、書類棚ひと棚分相当のファイルや書類をバッグに入れて持ち歩いているようなのです。この日は、荷物が3つでしたが、畑を歩く予定だったので、綾乃さん的には少なめの日だったそうです。

小柄な綾乃さんなのですが、軽々と3つの荷物を肩にかけて、畑を歩いているのをみて、「1つ持とうか?」と気軽に声をかけたのですが、肩にぐっと紐が食い込む重さで、断念。綾乃さんは「大丈夫、大丈夫、今日はそんなに重くないですから」と言うのを、今度は村の人が見かねたのか、1つ持ってくれました。

話はそれますが、セネガルに来てからというもの、何かと相手を見上げて話しをする機会が増えました。「実は、私も小柄な方だったのだ」と人生で初めて思う日々です(筆者の身長は170センチ)。

話を元に戻して、次の写真はこれからンブールの宿を発って、セネガルに戻るという日の綾乃さんの写真です。
荷物が6つのとき

この姿をみて、畑を歩いていたとき、「今日はそんなに重くないですから」というひと言に納得。私にはとても重そうなこの大荷物なのですが、この日も、荷物を6つも持っていているのに、なんとも爽やかに、軽々と歩いていく姿をみて「ただ者ではない綾乃さん」としみじみと思いました。

さて、ここまで、綾乃さんのことを3回続けてお知らせしましたが、続いて綾乃さんには登場してもらいつつ、今度はアンテルモンドのスタッフの皆さんのことをご紹介しましょう。テーマは「働き方改革」です。

(ムラのミライ 研修事業チーフ 原康子

2019年7月23日火曜日

「水不足」と洪水の関係とは??

ムラのミライの和田、中田さんによる村での研修が行われた際の様子を少しだけご紹介いたします。

今回のキーワードは「洪水(水が溢れて家に浸水したりすること)」。
前回、「村に十分な水がない」と言っていた村人たち。その一方で、最近洪水が起こったという話も出ていました。
この「洪水」というポイントを取っ掛かりとして研修は始まりました。以下、Ndianda(ンディアンダ)村での研修のやり取りをご紹介します。

和田「この中で一番年上なのは?」
村人1「私です。57歳です。」
和田「あなたが覚えている限りで、最初に洪水が起こったのはいつですか?」
村人1「うーん、1960年代かな。」
和田「そのあとは?」
村人1「1990年から2000年の間かな」
和田「そのあとは?」
村人1「・・・去年。」
和田「今までなかった洪水が起きているようですが、いったい何が起きたのでしょう。」
村人2「雨の量が多くなったのかな。それとも・・・」
和田「じゃあその流れ出た水はどうなった?その水を使うことができますか?」
村人3「はい。水をためて、畑の水やりに使えます。」
和田「(ため池などに)残っている水ではなくて、あふれ出た水はどうですか?」
村人「・・・」

あふれ出て流れてしまった雨水はもう使うことができない・・・その事実を、和田は土壌の役割(雨水を貯えておく唯一の物質であること)や土壌侵食との関係(水を貯える土が流れてしまったこと)にも触れながら明らかにしていきます。こうして、村で起きている洪水の意味するところを理解していきました。


自分の足で村を観察する

さらに、実際にみんなで村を歩きました。干上がった井戸、根が露出したヤシの木、塩化した畑の土などを観察し、すべてが関連して「水不足」という現象として現れていることが明らかになっていったのです。
村で見たことをみんなで共有した後で、和田はこう言いました。
「あなたたちは洪水が起き始めた40年前から、土壌を守るために何もしてこなかったということです。そのために多くの水を失ってしまいました。このまま何もしなければ、30年もたったらンディアンダ村はなくなってしまうでしょう。」

この言葉の持つ現実味を、それまでの観察と説明から感じた村人たちは、どうしたら土壌を守り、水を貯えられるか、その対策をひたすらに考え始めたのでした・・・。

(セネガル事務所 菊地綾乃)

2019年7月16日火曜日

セネガル研修の一コマ~「今年は水がない?!」

農業をするには、まずは土と水を守ることが必要。
その基本の考えが実践に結び付くよう、根気強く復習をしています。
研修の様子をちょっと覗いてみましょう。

最初の村での一場面。

村人「今年は水が足りないので野菜栽培をしていないんですよ。
降水量が少なかったんです。」

和田「足りないって、何リットル足りないの?」
村人「それは今は分からないけど・・・」
和田「いくらの水が足りないか分からないで、どうやって足りないって分かるんですか?
「水が足りないというけれど、それはどういう意味なのか。いくら水があって、栽培にいくら必要で、そのためにはいくら不足しているのかが分からなければ、水が足りないのかどうか分かりませんよ。」


実際に必要な水の量はいくらなのか?

村人「昔は水が豊富だった。降水量も多かった。」
和田「それはどうやって知ったの?」
村人「昔はモロコシを植えていた。モロコシは粘土質の土壌で良く育つんだ。
そのころは雨がたくさん降ったから植えられたということだよ。」
和田「それは何年前?」
村人「30年前かな。今は気候が変わったから、モロコシ栽培をやめて、違う種類に変えたんだ」
和田「今と昔で何が変わったのかな?昔は雨が多くて、今は雨が少ないのは?」
村人「昔は農業をする人が少なかったけれど、今は農業用地の範囲が増えたから?」
別の村人「…そういえば、昔はここにたくさん森があったけれど、今は消えてしまった。」
和田「森の役目は何?」
村人「うーん・・・南のカザマンス地方には森がたくさんあって、それで雨がたくさん降るな。」

和田「ふむ。ここで疑問が二つあります。
それは、あなたたちが木を切ってしまって、それで雨が降らなくなったのか。
それとも、神が怒って雨を降らなくしてしまったのか、どちらでしょうかね。」
村人「それは難しい質問だね。」

和田「言い換えれば、解決策は二つあって、もし神が怒ったのなら、モスクに行ってお祈りすること。でも森がなくなったからだとすれば、森を作り直すこと。
このまま続けていたら10年後にはこの村は地図から消えてしまうかもしれないよ。」
村人「・・・」

和田「今の状況は長い年月を経てきた結果、長い間何も対策をしてこなかった結果です。
水を確保する方法もお話しましたが、本気で向かい合ってこなかった。
そして今になって「水がない」と言っている。
土と水を守る対策をしたら時間はかかりますが数年で成果は出ます。それをする用意はできていますか?」

「水がない」ことへの取り組みの本気度を再度問われた村人たち。
さあ、この耳の痛い言葉に対して、村人たちはどう反応するのでしょうか。

(セネガル事務所 菊池 綾乃)

2019年7月10日水曜日

セネガル研修「このヤシの木、なにか変?!」

ムラのミライ和田によるセネガル研修のワンシーンをご紹介しています!

村のある畑で。
和田「この畑に3本のヤシの木があります。よく見ると1本は他の2本とは違います。
種類が違うわけではなく、発育も高さもほとんど同じです。一体何が違うのでしょうか。」

研修生たちは研修最初のこの質問に不意を突かれながらも、考え始めます。
遠くからでは分からないのでヤシの木のところまで行って、3本の木を上から下まで観察します。

研修生「中央の一本だけ、幹の下の部分の形が違う。まっすぐではなく、膨れている。」
別の研修生「木の根がしっかりと地中に埋まっていない。」

和田「それはどういう意味かな?」

研修生「地面がなくなった?」
和田「そう、つまり地表は以前はもっと上にあったといういうことだ。
それが、いつのことかは知らないが、雨水などで土の表面が削られたんだ。」

「では、この畑にあるもの、利用できるものを使って、土を守る計画を作ってみましょう。」

和田が投げかけたこの課題により、研修生たちによる熱い議論が始まるのでした。
研修生1「畑のここに、この方向で小さな土手を作って、植物を植えるんだ。」
研修生2「いやいや、雨はこっちの方角から流れてくるから、この方向に植えないとダメだよ。」
研修生3「いやいや、ここにも何か対策をしたほうがいいんじゃないの?」

とにかく熱い議論でした!

画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、立ってる(複数の人)、空、木、屋外、自然
長~いヤシの木

そんなこんなで研修も終わりに近づいた頃。
「どうして私たちは畑でこの研修をしたのか分かる?」と和田。

和田「それはね、畑で起きている現実を知るため。土の声を聴くためだよ。
もしあなたたち農家と土の関係がよい関係なら、土は満足している、そう言ってくるんだ。けれど、時には土の悲しみも聞こえてくる。
あなたたちも畑の土と対話してごらん。土は喜んでいるかなと。」

研修生たちは苦笑いしていましたが、農業には土の存在が欠かせない。土の状態によって農業が左右されます。その土を労わるのか、痛めつけるのか、ということを問われている気がしました。

そして最後に、
「今から2~3年後には研修でやったことを実践しているのを、見に来てください。」
そういった研修生の言葉が印象的でした。

数年後に良い土と水を蓄えた畑になるように、研修生たちは何を実践していくのでしょうか。楽しみに
しましょう。

(セネガル事務所 菊池 綾乃)

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2019年7月2日火曜日

助ける勇気、助けられる勇気(活動報告会参加報告その2 西宮・子育て編)

後半、西宮での子育て事業の活動報告。
女性の自立を支援しているa little(ア・リトル)の坂本さんによる説明、また子育て事業に携わっている原さん、山岡さんとの座談会もあり、にぎやかになりました。
お話の中で、私の印象に残ったポイントが幾つかありました。

①助ける⇔助けられることの両立(共生)を目指すということ。 
私が驚いたことが、調査によって「産前または産後に誰のサポートも得なかった女性が一定数存在する」ことが明らかになったことです。心身ともに不安定な時期だからこそ、誰もが助ける、そして助けられる仕組みづくりの重要性を痛感しました。

② 半径1.5km以内に、行政や親戚などサポートを受けられる人がいるという調査結果。
何かあったときに頼ることのできる存在が1.5km以内にいるという安心感は、ないと感じる場合よりもとても大きいなと想像しました。「一歩」外に出て助けを得ることで、日常の大きな支えになります。

それぞれの持ち味を活かした支援

自分の時間、夫婦の時間を持つこと。
自分の時間や、パートナーとの時間を改めて作ること。聞き取り調査では、「最近の一週間で15分以上、パートナーと話したのはいつですか?」と質問をしたそうです。すると、15分以上の会話をしていた夫婦の数が驚くほど少なかったとのこと。日常の忙しさの中では、ゆっくり考えたり家族と話したりする時間がなかなか持てないのだな、というリアリティを感じました。なので、パートナーシップ講座が、夫婦間の情報格差を埋め、主に男性がより育児に協力できる機会提供の場としても、印象深かったです。

出産や育児の悩みは、個人個人のものに見えて、社会全体の課題であり、誰もが参加できる空間づくりはこれからも重要です。子育てにとどまらず、助ける勇気、助けられる勇気を持てる人でありたいなと感じる報告会でした。

(笠見 友香 ムラのミライ インターン)

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2019年6月25日火曜日

本当に水は”ない”のか?(活動報告会参加報告その1 セネガル編)


2019年69日、京都で開催されたムラのミライの活動報告会に参加しました。
これから2回にわたって、セネガルと子育て分野の活動報告についてまとめていきます。

まず、セネガル駐在員の菊地さんによる、若者農家育成プロジェクトのお話。

セネガルの活動地での降水量は日本の4分の1ほど、雨季は約3ヶ月しかない。
加えてここ1~2年は村にある井戸の塩化がひどく、農業に使う水が不足しているという。
結果、地方で農家として生計を立てることが難しく、多くの若者が都市部に出稼ぎに流れている。

しかし、雨季には水はたっぷりあるのです。

菊池さんは、こんな問いかけをしました。
「雨季にある水を乾季でも使うためには、何をすればいいでしょう?」

工夫して水を活用する
実際にプロジェクトでやったことは、まず、「たくわえる」こと。傾斜に草を植える、堤防を作るなど、土から水が流れないための工夫をしたといいます。
次に、「節約する」こと。少ない回数で効率的な水やりをするため、一日に数回水をやっていたのを、朝一回だけに。また、植物の根元に藁を敷き詰めることで蒸発を防ぐという、地域にある知恵を活用している農家さんもいました。

セネガルの報告を通して、「あるものを最大限利用する」ことの重要性を痛感しました。
時間がない、機会がない。自分の行動を振り返らず、ついつい「ない」ことを言い訳にしている自分が重なるようで、どこか恥ずかしさを覚えました。
ないものではなく、あるものに注目する。セネガルの若者が地方でも農業で生計を立てられるように、水やりを工夫する。私にとっても、どんな組織にとっても必要な視点だなと感じました。

→後半につづく

(笠見 友香 ムラのミライ インターン)

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2019年6月18日火曜日

「今日は何時に・・・」研修モニタリング セネガル農家編

ムラのミライは2017年2月から、西アフリカのセネガルで、若い農家の人材育成に取り組んでいます。
以下は2018年4月、ムラのミライスタッフの前川香子が、これまでの研修のモニタリングのために村を訪れた時のやり取りです。

前川   「今日は何時に水やりをしましたか?」
村人S 「朝の6時~8時です。夕方にもしますよ」
前川   「水やりの水を節約する方法について、聞いたことはありますか?」
村人S  「聞きましたよ。研修では朝の時間帯、遅くても9時頃までに水やりをするといいと聞きました。でも、朝に水をやると、井戸の水が途中でなくなってしまうんですよね。だから、水が増えるのを待って夕方にもやります」
前川  「なるほど。水やりを朝だけにしてみたことはありますか?」
村人S  「ないですね」
前川  「そうなのですね。では、水やりをした水が蒸発しないで土の中に留まるようにする方法を知っていますか?」
村人S  「知りません」

前川  「向こうにある唐辛子の苗に何かかぶせてありますよね?」
村人S   「あぁ。あれはワラ(藁)をかぶせてあります。風よけのためと、水やりをした時に衝撃が少なくなるようにそうしているんですよ」
前川   「ワラの下の土を触ったことはありますか?」
村人S   「ありますよ」
前川   「他の何も被せたり敷いたりいない土と比べるとどうですか」
村人S  「ワラを被せてある土のほうが湿っていますね」
前川    「そうですよね」

Sさんは、土に水分を蓄える方法を知らなかったのですが、実はその方法をすでに別の目的で実践していたのですね。
前川は、Sさんへの質問を通して、ワラを敷くことによる保水効果を気づかせようとしたのでした。

別の畑では、村人Mさんがこんな事を言っていました。
「これは知り合いから聞いたやり方なんだが、ピーマン畑でワラを敷いているんだ。ワラを敷くと水やりの回数が減ったり、雑草が生えにくかったり、農作業が楽になることが分かったよ」

井戸の水が限られているこの村にとっては、水やりの水を確保することがとても重要です。

「畑にワラを敷く」という、同じ行為をしていても、保水ができる(=水やりの水を節約できる)という効果に気付いた農家さんと知らなかった農家さんがいました。

そんな農家さんたちがお互いに学び合えるように、機会を作るのも私たちのできること。
今年は特に農家さんたちの畑での学びを大切に、実地での研修をしていく予定です。
菊地綾乃 ムラのミライ 海外事業コーディネーター)



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2019年6月11日火曜日

「え!こんなに?」住民による現状分析 セネガル農家編

ムラのミライは2017年2月から、西アフリカのセネガルで、若い農家の人材育成に取り組んでいます。
2018年1月に、ある村で実施した農家研修の一コマをご紹介します。

「キャベツの栽培工程を全部、順番に書き出してみてください。使う農具や肥料、水の量、働く人数も全部です」
講師の和田からこんな課題を出され、グループで頭をひねる研修生たち。
それでも話し合いながらなんとか書き出し、内容を発表。

あるグループの発表では、100平方メートルのキャベツ畑で・・・  
1 草取り 5人で30分
2 耕し  5人で30分
3 植替え 5人で30分
4 水やり 5人で30分
5 収穫  5人で30分
 
どうやら「30分」がお好みのよう。



和田から一言。
「植替えが30分とあるけれど、本当に30分で終わるの?」

そこで、実際に計算してみます。

ちょっと複雑ですが、みなさんも考えてみてください。

50㎝毎に苗を植えるとして、1辺あたり20本の苗になる。
→全部で400本の苗なので、1人当たり80本の苗を植える。
→1本の苗につき、<苗を運んでくる、土を掘る、植える、土をかける>の動作で2分かかるとして、80本×2分=160分=2時間40分

あら、大変。
ひとりあたり2時間以上かかる計算になりました。
想定していた30分とはだいぶ違いましたね。

こんな風に具体的に考えていくと、必要な時間や道具や人数がハッキリとしてきます。

極めつけに出された課題は、「それぞれの工程にかかる費用を出してください」というもの。
この課題に取り組んだ農民たちからは、「最初の苗床作りだけで、こんなに費用がかかるのか!?」なんていう声が聞こえてきます。
それもそのはず。農民たちはこんな作業をほとんどしたことがなかったのですね。

「私たちはただただ働いてきましたけど、こんな事はなにも考えずに働いていたんですね」
最後にある農民が言い残しました。

ムラのミライの役割の一つは、誰も問わなかったことを問うこと、それによって、今まで農民たちが考えなかったことを考えるきっかけとなることです。
自分たちが行っていることを事実に基づいて聞いていくだけなのですが、そこから自分たちで気づくことがあるのですね。そんな気づきこそが、次の行動へとつながっていくのです。

菊地綾乃 ムラのミライ 海外事業コーディネーター)



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2019年6月4日火曜日

a littleの皆さんに聞いてみた メタファシリテーションとa little

ムラのミライa little(以下、ア・リトル)は、「西宮で広げる、地域で助け合う子育ての場プロジェクト」を2018年4月から行っています。2019年5月、ムラのミライとア・リトルがプロジェクトの1年目を振り返る場に、広報ボランティアとして同席しました。
私の広報ボランティアとしての役割は、ムラのミライが持つメタファシリテーションの力をわかりやすく伝えることです。その難しさに喘いでいる私は、ムラのミライがプロジェクトにもたらしたものについて、ア・リトルのみなさんにお聞きしました。

「聞くこと」が持つ力

ア・リトルのようこさんは、「聞くこと」が持つ力について話してくれました。

最初は、メタファシリテーションの手法「聞かないといけない」「アドバイスしてはいけない」というのが苦しかったです。私はアドバイスをして人の役に立ってきたと思っていたので、アドバイスできないことは、人の役に立てていないという気持ちでした。
でも続けていくうちに、聞くことは、自分で答えを導き出すことで問題解決に結びつくメソッドだとわかりました。上手に聞きさえすれば、アドバイスしなくても解決にたどりつくことができます。
このスキルを身に着けたことで、アドバイスという、ともすれば人を傷つけてしまう可能性があるものを使わずに、人の役に立つことができるようになりました。

家族との会話の変化

また、ゆうこさんは、プロジェクトでの効果に加えて、家族との会話の変化を語ってくれました。
5歳の娘との会話が変わりました。保育園での一日の様子を聞くとき、前はざっくりと「お昼何食べた?」などと聞いていましたが、今は「今日は園庭にでたの?」など具体的に聞くようにしています。するとそれをきっかけに本人が思い出して、こんなことをした、あんなことがあった、と一日の出来事を次々と話してくれるんです。
また、メタファシリテーション講座に夫と出たら、夫との会話も変わりました。「a littleの会員何人増えた?」等具体的に聞いてくれるようになり、関心を持ってくれている、知ろうとしてくれていると感動しました。メタファシリテーションはパートナーシップにも役立ちます。生活全般で役に立っています。

力を信じて引き出す

その他にも、
メタファシリテーションは「人の力を信じて引き出す」手法だと思います。その人以上のものを求めるのではなく、その人らしくいられるように接することで、その人が力を出すのを待つ。そのスキルを手に入れて、人への接し方の層が厚くなったように感じます。
 ムラのミライの二人(同プロジェクト担当の原・山岡)は、いつも肯定して聞いてくれるので、うれしくなって次々話してしまいます。力を伸ばしてくれる存在。計り知れないエネルギーを感じます。
 ムラのミライが持っているのは共感力。信頼してくれていて、ああしろこうしろ言わない。見守ってくれている。だからがんばろうと思えるのです。
などのお話をお聞きすることができました。広報ボランティアとして初めて参加したミーティングは、ムラのミライがア・リトルにもたらしたものについて知ることができるうれしい時間となりました。

中川 智子 ムラのミライ 広報ボランティア)



メタファシリテーションについては、こちら
西宮プロジェクトについては、こちら

2019年5月28日火曜日

自然な会話から、事実を引き出す

2月に神戸ソーシャルキャンパスにて開催された「災害ボランティア応援企画!!被災地のニーズを聞き出すには?」に参加しました。
被災地支援などを行っている「ワカモノヂカラプロジェクト」の皆さんや、市民の方々とともに参加し、にぎやかなセミナーになりました。

答えやすい質問

「思い出させる質問をする」
「信頼関係を築き、対等な立場で会話をするため、相手の何でも答えられるという自尊心をUPさせる」
私も久しぶりのセミナー参加でしたが、宮下さんの説明から、事実質問の基礎を思い出すことができました。


「仕事を分担する」って、なに?

さらに今回は、ワークシートを使った事実質問の実践もありました。
質問リストに対し、事実質問かそうでないかを判別していきます。
このワークシート、あなどるなかれ、今まで何度かセミナーに参加させてもらったこともあり、事実質問はある程度理解できたと「思い込んでいた」のですが、落とし穴にはまってしまいました。
「(外部者からメンバーへ)サークルのメンバーで仕事を分担していますか?」
私が事実質問だと思ってしまったこの質問。「仕事」とは具体的に何なのか、「分担する」とは、誰にどの程度仕事を割り振ることなのか。この部分を見過ごしてしまい、まだまだ学習が必要だなあと思いました。


対話から事実を抽出する

さらに実践編で、周りの人の会話を観察していると、事実質問を習ってすぐの、会話が続かなかった頃の自分を思い出しました。
普段ついつい使ってしまう「なぜ」「どう」を排除することだけを意識すると、なかなか会話が進まなくなってしまうことがあります。ですが、会話の流れの中で、自分の行動手順を思い出して聞いてみたり、同じ風景を見るような質問をしたりすることで、質問の糸口が見えてくるのだなと感じました。

会話はあくまで相手の言葉を受け、流れの中で進んでいくもので、自然な会話の流れから事実を引き出していけるような聞き手に近づきたいなと感じたセミナーでした。

(笠見 友香 ムラのミライインターン)




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→読み切り形式でどこからでも読める、メタファシリテーションの入門本。
 対話型ファシリテーションの手ほどき